症例

慢性蕁麻疹の漢方治療

 

《慢性蕁麻疹の改善》

 

慢性蕁麻疹とは、皮膚に赤みやかゆみを伴う膨疹(ぼうしん)が繰り返し現れ、6週間以上続く状態をいいます。かゆみを伴い、発疹が数時間で消えるのが特徴ですが、次々に新しい発疹が出て、慢性化すると生活の質(QOL)を大きく下げてしまいます。

西洋医学的には、ヒスタミンなどの化学物質が皮膚に放出されることで起こるアレルギー反応の一種とされ、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が中心に使われます。しかし、薬を飲んでいる間は落ち着いても、服用をやめると再発を繰り返すケースも多く、「原因がわからない」「ストレスや疲労で悪化する」といった方が少なくありません。

 

東洋医学では、慢性蕁麻疹を「風」「湿」「熱」や「血虚」「気滞」などの体質的な乱れとして捉えます。

皮膚は①体表で「衛気(えき)」により守られており、この衛気の乱れや不足があると、外からの刺激に過敏に反応してしまいます。また、②内面では「肝」「脾」「腎」のバランスが関係しており、ストレスや食生活、睡眠不足などが悪化因子になることもあります。

 

主な漢方的な体質分類

 

①風熱(ふうねつ)型

かゆみが強く、発疹が赤く熱感を伴うタイプ。ストレスや体の熱がこもって悪化。

処方例:消風散、黄連解毒湯、温清飲

 

②風湿(ふうしつ)型

発疹が淡く、じっとりと湿っぽいかゆみ。湿気や疲労、冷えで悪化。

処方例:防風通聖散、薏苡仁湯、当帰飲子

 

③血虚風燥(けっきょふうそう)型

皮膚が乾燥し、かゆみが夜間に強く出る。慢性的・体力低下を伴う。

処方例:当帰飲子、十全大補湯、四物湯

 

④肝鬱気滞(かんうつきたい)型

ストレスや感情変化で悪化する。発疹の出方が日によって異なる。

処方例:加味逍遙散、柴胡加竜骨牡蛎湯

 

症例:40代女性 主訴:慢性的なかゆみと蕁麻疹の再発

 

数年前から体や首まわりに蕁麻疹が出るようになり、特に仕事のストレスが強い時期や生理前に悪化。皮膚科で抗ヒスタミン薬を服用して一時的に落ち着くものの、薬をやめると再発。夜はかゆくて眠れず、皮膚の乾燥も強い。冷え性で疲れやすく、手足がむくみやすいのも気になる。

 

困っている症状

 

毎晩のかゆみで眠れない

ストレスで悪化する

抗ヒスタミン薬をやめると再発

・皮膚が乾燥してカサカサする

・疲れやすく、手足が冷える

 

問診と糸練功で確認したところ、お困りの症状は「血虚(けっきょ)」と「肝鬱(かんうつ)」の反応が明確でした。

血虚によって皮膚が十分に滋養されず、かゆみが生じやすくなっており、同時に肝の働きが滞ることで自律神経が乱れ、ストレスが皮膚症状に影響している状態と考えられました。

 

症状を改善するために

 

血を補い、皮膚を潤す処方

気の巡りを良くしてストレス反応を鎮める補助薬

 

をお出ししました。

 

服用後3週間ほどで、夜のかゆみが軽くなり、眠れる日が増えてきました。

1ヶ月で新しい発疹の出る頻度が減り、肌の乾燥も改善傾向に。

2ヶ月後にはかゆみのピークが和らぎ、症状が安定。

半年の服用で季節の変わり目にも症状はほとんど出ず、ストレスがかかっても悪化しなくなりました。

現在は、血と気のバランスを整えるお薬を少量維持服用中です。

関連記事